
もうそろそろ一年が終わりますね。
バチャマガ読者を始めとしたメタバースユーザーにとって、2025年はどのような年だったのでしょうか?
毎年恒例の『VR流行語大賞』では、ハッシュタグ企画によって皆さんのお声を集めておりました!たくさんのご回答、ありがとうございます!
応募されたワードの中から、上位3位にランクインしたワードを中心にご紹介します!
まずは先に順位発表から!
- 3位 『Gosling』
- 2位 『もちふぃった~』
- 1位 『VR演劇』
今年も様々な界隈のユーザーからワードの応募がありましたね!
2021年より続いている本企画、応募されたワードのうち上位3位を「VR書道家」のすいほーさんに揮毫いただきながらそれぞれの語について掘り下げ、今年の振り返りを行っております。
すいほーさん、今年もよろしくお願いします……!!!
目次
3位:アバターの表現とネットミームが組み合わさった「概念」

現在、VRChat界隈や絵師たちの投稿に散見される『Gosling』というハッシュタグ。この言葉は、ネットミームに端を発して拡散されました。そのきっかけとなったのは、アバター「Lapwing」用にHash氏が手掛けたフェイストラッキング・アドオンのプロモーションビデオ(PV)でした。
海外には「Literally Me(文字通り、俺だ)」というミームがあります。これは、映画の登場人物などに自分を投影する際に使われる言葉らしく(日本でいうところの「今これ」に近いニュアンスのようなものでしょうか)
https://www.reddit.com/r/bladerunner/comments/1gvt88x/what_does_literally_me_means/?tl=ja
この「Literally Me」を表現する際、アイコンとして俳優ライアン・ゴズリングの画像やGIFが選ばれることがしばしばあり、そこから転じて彼自身がミームとしての『Gosling』と呼ばれるようになったようですね。
彼が映画『ブレードランナー2049』で演じた捜査官「K」は社会の歯車として過酷なルーチンをこなし、家では独りで過ごす孤独な男です。彼が唯一の救いを見出すのは、ホログラムの恋人「Joi」との時間だけでした。この「空虚な日常」と「デジタルな存在への依存」が現代を生きる人の孤独感と強く同期し、「Literally Me」ミームとしての地位を確立したという背景があったのかもしれません。
Hash氏によるLapwingの広告動画は、単なる機能紹介を超えた衝撃を視聴者に与えました。 動画の中でアバターが見せる、ふとした瞬間の伏し目や、わずかに上がる口角。それらは計算されたアニメーションではなく、背後にいる操作者の表情がフェイストラッキングによって反映された「身体性がもたらした生物的な揺らぎ」 でした。
アバターは本来「製品」「創作物」「ユーザーが動かす分身」であり、ユーザーとしての人格はログインして相対しないとあまり感じられない、それを操作する存在によって付与されるものと思われます。しかし、その動画が映し出したのは、アバターという製品の中に「人間性」の断片が存在すると思わせる光景でした。
映画『ブレードランナー2049』の終盤で、Kは街角にある巨大なJoiの広告ホログラムを見上げます。自分だけの特別な存在だと思っていたJoiが、実は全く同じ声と姿で不特定多数に語りかける「大量生産された商品」に過ぎなかったという現実に直面するのです。
Joiが微笑みかける姿とLapwingの無邪気な笑みは、どこか重なる印象があります。あのPVを観たユーザーが抱いた心境も、もしかするとこれに近いものがあったのではないでしょうか。多くの人間に向けられた製品の広告であると理解していながら、そこに自分が見出した人間性に心惹かれてしまった。Hash氏がYouTubeに投稿したこの動画についた

「今のこの感情を伝えられるライアン・ゴズリングの画像は、どこにも存在しない」
といったコメントは、この「手が届きそうで届かない、デジタルな存在に対する切ない感情」が表れたであろう一つのかたちであり
今日ミームとして扱われる単語『Gosling』の誕生へとつながったのかもしれません。
今や『Gosling』は従来のライアン・ゴズリングを使用したミーム的な意味合いの他に「デジタルな存在に対して抱く、手が届かないゆえの切なさを示す概念そのもの」を指す表現として(特にLapwingを描く際に)扱われているのがよく見かけられます。
2025年現在、かつてないほど「VRChatユーザーではない人々」も、アバターを単なる道具や人との交流に使用する媒介ではなく、独立した一つの「キャラクター」として捉える場面が増えているような印象がありました。記号としてのアバターが有するキャラクター性と、中の人の人間性が不可分に溶け合うメタバース独自の現象。その象徴ともいえるのがこの『Gosling』という言葉なのではないでしょうか。
ますます上がっていくVRChatの知名度のこともありますし、来年はさらにアバターが身近な概念として扱われるのかもしれませんね。
今回は3位にこの『Gosling』がランクインしました!

2位:多方面から協力を受けた、アバター改変のゲームチェンジャー的ツール

『もちふぃった~』はおもちのびる氏によって製作された、VRChatアバター用衣装フィッティングツールです。
2025年11月17日の公開以降、幅広いユーザーに利用されています。
ご本人に見つかったことも話題になりましたね。
『もちふぃった~』は、おもちのびる氏制作アバター『ベリル』に付属していた専用衣装合わせツール『もちフィット』が前身となっています。
2025年2月のこの投稿から、「もちふぃった~単体版リリース」の話題がアバター改変を楽しんでいるユーザーの間で持ち切りでした。
「単体版リリース」に先んじて検証が出来た環境や、それらを動かしてみてどれほど良いものなのかをアバター制作者などのクリエイター側から発信されていたことで、常にタイムラインに話題が流れて来ていた印象があります。
また、『もちふぃった~』の構成要素である、「もちふぃった~変換用プロファイル」の存在も大きいです。このプロファイルを用いて衣装を対象のアバターへと変換していくわけですが、こちらの作成はおもちのびる氏ではなく各々で制作する形となっています。
アバター制作者自身でプロファイル制作を行うだけでなく、それをアバター制作者とは別のクリエイターが商品として販売する場面も見られるようになりました。
『もちふぃった~』のリリースは「アバター」「ワールド」「衣装」「アイテム」「ギミック」の他に「変換プロファイル」という市場が生まれた瞬間でもあるのかもしれません。
非対応の衣装を着せ易くすることでアバター改変の環境を大きく変えたともいえる、この『もちふぃった~』が2位にランクインしました!

1位:頂点と裾野、どちらも大切に積み重ねてきた界隈の躍進

『VR演劇』はVRChatやclusterなどでユーザーが行っている活動の内、その内容が演劇となっているものを指すジャンル名です。
VRChatやclusterで演劇活動が行われていることをご存じでしたか?
アバターやワールドを用いることで外見や空間に高い自由度を持たせ、遠隔地でも予定を合わせて稽古や本番への集客が可能なため、メタバースプラットフォームは演劇との高い親和性を有しています。
2018年ごろから『バーチャル劇団まぼろし座』などの劇団が活動を展開していましたが、2023年ごろから本格始動、2024年には法人化した団体『メタシアター』によって『VR演劇』の盛り上がりは勢いを増していきました。
『メタシアター』は『VR演劇』活動の象徴となる劇場を設けた後、併設されたカフェでの定期イベント開催によって界隈内の交流の場を運用し続けています。
演劇は観る側と披露する側のギャップが大きい活動内容という印象がありますが、教育機関的なイベント『Dramapiaアクターズスクール』を開講することで、活動を始めたばかりの人の技術習得環境がカバーされているのも凄い。
さらに今年印象的だったのは、投稿タグ数も2番目に多かった『劇王Virtual』と、そしてその影響を受けたであろう『メタシアター演劇祭』の成功です。
「日本劇作家協会東海支部」からの後援を受け、審査員に実際に演劇の活動をしている著名人を招待したこの催しは、現実とバーチャルの演劇とで世界の橋渡しとなりました。
また、現実の演劇界で確立された『短編で競う』という洗練されたルールをVRに持ち込んだことにより多数の劇団が参加でき、開催期間中のSNS上では「自分もVRで演劇を始めてみたい」「次は演者として関わりたい」という投稿が方々で上がっておりました。
先月開催された『メタシアター演劇祭』はその期間中、連日開催された公演がほぼ満員となる形で大成功となりました。今年始めた取り組みであるイベントカレンダー『Wondernote』との提携も功を奏したのだと思われます。
『Wondernote』メタシアター演劇祭2025特集ページ
https://wondernote.net/campaigns/metaartfes2025
安定したコミュニティ運用や裾野を広げる取り組み、リアルとの接点も設けていくなど、多方面で活発に活動してきたVR演劇界隈。
そこで活動するユーザーや、VR演劇のファンたちの熱が集まり、出来てまだ2~3年の界隈ながら今年大きく躍進した『VR演劇』が堂々の1位となりました。
また、『劇王Virtual』は第二回の開催が確定しており、
『Dramapiaアクターズスクール』も第三期生が確定したようです。
文化が「消費」されるだけでなく、凄まじい勢いで「再生産」され始めたVR演劇の勢いは、2026年もさらに加速していきそうですね。
今後ますます発展していくであろう『VR演劇』、是非ご注目下さい。

良いお年を!

今年も界隈内外でインパクトのある出来事が目白押しで、とても刺激的な一年でしたね。
今や「ニッチな趣味」から徐々に「皆も知っているあの場所」へと変わりつつあるVRChat、今後さらに様々な価値観を持つ人が交わるようになり、色々な変化が方々で起きていくことでしょう。
また来年も皆さんが楽しく過ごせますように。では、良いお年を!
上位に入賞した3語の掛け軸を配布します!
今回の『VR流行語大賞2025』の3位以内受賞ワードの掛け軸を配布します!
こちらバーチャルライフマガジン公式BOOTHショップにて配布しております!ぜひぜひご利用ください!
※記事公開と同時にBOOTHにて公開予定※
関連記事・リンク
「literally me」ってどういう意味?(reddit)
https://www.reddit.com/r/bladerunner/comments/1gvt88x/what_does_literally_me_means/?tl=ja
『Lapwing』商品ページ
https://booth.pm/ja/items/4993931
『ブレードランナー2049』(Prime Video)
https://www.amazon.co.jp/%E3%83%96%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%8A%E3%83%BC-2049-Denis-Villeneuve/dp/B0CWGVCG2T
『もちふぃった~』商品ページ
https://yamirin.booth.pm/items/7657840
『Wondernote』「メタシアター演劇祭2025」特集ページ
https://wondernote.net/campaigns/metaartfes2025
『一般社団法人メタシアター』公式サイト
https://metatheatervr.org/
投稿者プロフィール

- 広報部隊長(元二代目編集長)
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楽しいこと、誰かが頑張ってる姿を見ることが大好きなVRライターです!
ぼく自身もVRChat上でいろんな活動してます!
バーチャルの楽しいことをたくさん知ってもらえるようがんばります!
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翠邦(すいほー)さん
2019年8月9日に書道が楽しめるワールド『胡蝶庵ーKochou_an』を、2020年9月22日にAndroid対応の書道ワールド『胡蝶庵・宿坊ーKochou_an・syukubou』を公開。
過去に『バーチャルマーケット5』とのコラボ企画なども実施。
X:https://x.com/suiho_shuji