
本記事は先日VRChatで公開された『島根県江津市石見神楽『大蛇』/Gotsu City, Shimane Prefecture IWAMI KAGURA “OROCHI”』に影響されて石見神楽を見に行ったレポートの後編です。『石見神楽』や道の駅、江津市の観光地を巡りながら帰るまでをレポートします。
前編はこちら
目次
石見神楽~温泉津舞子連中による『恵比須神社奉納神楽』~
塩祓

今回の神楽で一番最初に披露された演目は『塩祓』。名前からもわかる通り、神へ奉納する神楽として、場を清める演目のようでした。華やかに女性が2人で回りながら踊っている様は蝶のようでした。このような舞台だと女人禁制の場合が多いイメージでしたが、初っ端からその想像を砕かれました。
岩戸

スサノオの悪戯に怒った天照大御神が天岩戸に閉じこもり、世界は闇に包まれた……という語りから入るのは『天岩戸』。アメノウズメや天乃手力男神が出てきて、踊れや歌えやのどんちゃん騒ぎ。こんなに見てて楽しくて面白い伝統芸能があるのかと驚きました。天照大御神がこの騒ぎで岩戸から出てくるのも納得です。この舞台で驚かされたのはその衣装。袖を折り返すことで、アメノウズメが服を脱いだ逸話を再現されていました。
龍神(創作)

今回の奉納神楽で最も自由だなと思ったのは創作演目の『龍神』。跳ねて回るのは当然として、天蓋を揺らして太鼓の上からとびかかるなんて、そんなのありですか!?。龍神が客席を練り歩けば、泣いてる子供もヒーローを応援する子供もいます。客席から子供を人質に攫う龍神を見た時には『本当にヒーローショーじゃん!!』ってなりました。こんなステージがテレビの画面越しではなく目と鼻の先50cmで繰り広げられるのだから、子供の憧れの的になるのも納得です。
塵輪


『塵輪』は第十四代天皇『仲哀天皇』とその家臣による塵輪征伐を神楽にしたもの。神楽では鬼の姿をしていますが、黒雲や雷と共に現れた災厄です。舞台上でも煙と共に現れ、舞台の上で大暴れします。重そうな衣装を着こみながらも激しい戦いが繰り広げられ、最後には矢が飛び刺さる演出までありました。石見神楽では定番の演目の一つで、囃子も客席も非常に盛り上がっていました。
恵比須

舞台上からお菓子が投げられる演目として子供たちに大人気の『恵比須』。楽しいのは子供だけではありません。客席から釣り上げた鯛を見せびらかす恵比須様は舞台上のアイドルのような可愛い魅力にあふれています。恵比須様のコミカルな動きや親しみやすい笑顔も相まって、ユーモアたっぷりの楽しい神楽となっていました。
大蛇








客席の照明が落とされ、いよいよ奉納神楽の最後を飾るのは石見神楽の代表的な演目『大蛇(オロチ)』です。舞台はスサノオがクシナダヒメと老夫婦を隠れさせるところから始まります。遅れて出てきた大蛇(オロチ)はそれぞれ酒の入った樽を飲みますが、この時のとぐろを巻いた姿と、滝のようになった姿はVRChatで見られなかった演出で、とても迫力を感じました。
大蛇(オロチ)が酔って寝たところでスサノオが現れ、寝込んでいる隙にまず1匹を倒します。激昂した他の大蛇(オロチ)に囲まれたり、火を吐かれたり、煙に巻かれたり、ド派手な演出が繰り広げられます。そうこうしているうちに残りを倒し、最後の1匹から三種の神器である『天叢雲剣(草薙剣)』が出てきます。観客席の子供たちから「がんばれ~!」という声援も飛び交う本場の大蛇(オロチ)を思う存分に堪能しました。
ちなみにですが、この大蛇(オロチ)はVRChatのワールドでも楽しめます。大阪・関西万博では55体の大蛇(オロチ)が登場して話題になっていましたが、VRChatのワールドでは8体の大蛇(オロチ)が出てきます。ぜひ見に行ってみてください。
大蛇(オロチ)の演目が終わった時点で、時刻はなんと22時半。それでもその盛り上がった熱は冷めやらず、記念撮影タイムがありました。


遠めに見ても迫力のあった大蛇(オロチ)の頭ですが、近づいて見てみるとそれぞれに表情があり、伝統芸能としての優雅さを感じることができました。記念撮影タイムでは大蛇(オロチ)の頭を持たせていただきましたが、石見和紙でできているらしく、思ったより軽いなとも思いました。
石見神楽を見たあと
就寝


朝から寝台列車に乗ってきていたのもあって、お宿に戻った後はすぐに就寝……非常によく寝ることができました。
2日目
せっかくの温泉街なので、朝風呂も行っておきたいところ。前日の夜に浸かった温泉とはまた別の源泉を使っている『薬師湯』で朝風呂を済ませました。風呂上がりに屋上で飲むコーヒーもまた乙なもので、世界遺産の古い街並みを眺められるいい場所でした。


温泉で前日の疲れを癒していざ出発。この日は曇りの天気予報だったので、まずは曇りでも楽しめる観光地として『水族館』へ向かいました。日本で唯一『シロイルカ』が飼育されており、ショーもみられる『島根県立しまね海洋館アクアス』です。ちょうど半年前に生まれたシロイルカの子供もおり、シロイルカの愛くるしい姿を見ることができました。





ここからはまた30分くらい車を走らせて、次の目的地『三江線廃線跡』へ。2018年まで広島県の三次駅と島根県江津市の江津駅を結んでいた『三江線』の廃線跡が残っています。
また、私がここに来たかった理由はもう1つありました。2017年の夏に三江線に乗った時に車窓から見えた橋が気になっていて、いつかまた来るぞ……!と思っていた場所です。その時に気になった『新江川橋』は上下2層構造になっていて、下段に江津市道新江川橋線、上段に国道9号バイパス江津道路が通っています。市道は橋の両端でT字路になっていますが、国道は両端共にトンネルで突っ切っており、なんか面白い構造だな~と思いながら見ていました。




江津市で一番気になっていたスポットを7年ぶりに訪問することができたところで、そろそろお腹が空いてくる時間になっていました。ここからまた少しドライブをして訪れたのは『道の駅 サンピコごうつ』です。地元名産の桑の葉を使った桑塩ラーメンにまる姫ポークのチャーシュー丼、それと大山鶏のからあげです。しかもサラダは地元の採れたて野菜がバイキングです。この日は実は朝ごはんも食べていなかったので、この量もぺろりと平らげることができました。どれも大変おいしかったです。

『道の駅 サンピアごうつ』では江津市を中心とした島根県中部地区の観光案内や名産品の販売がありますが、特筆すべきは『石見神楽劇場 舞乃座』という石見神楽の舞台が備え付けられていることです。毎週末に観光客向けの石見神楽の公演が行われており、手軽に石見神楽を楽しむことができます。この日は羅生門や大江山酒呑童子といった演目が行われていたようですが、最後まで見ていると帰りの列車に乗り遅れそうだったので今回の旅ではパスしました。



この後の予定は特に決めていなかったのですが、ところどころ道の駅で休憩したり、海を見たり、お土産を買ったりしながらレンタカーの返却のために出雲市駅へ戻りました。



出雲市駅のホームで待っていると、現れたのは今回の旅行の締めとなる特急『やくも』です。ブロンズ色の車体に八雲を煌めかせている、JR西日本の最新型特急電車です。座席は豊かな自然をイメージした緑色でゆったりした座り心地です。軽くお酒を飲みながら車窓を眺めていると天気はいつの間にか晴れて、車体と同じ色をした夕焼けが見えていました。



うとうとしている間に列車は終点の岡山駅に到着。岡山駅到着が21時半ごろなので、新幹線なら新大阪か名古屋くらいまではまだ帰れる時間帯です。筆者は岡山県在住なので、岡山駅を後にして自宅に帰りました。

家に帰っても『石見神楽』を味わえるように買ってきたお土産はカップ酒、缶ビール、瓶ビール、日本酒、桑茶、あご入り野焼かまぼこ、クリアファイル、ベイクドショコラ、他パンフレットです。島根県観光の定番である松江城や出雲大社ではなく、石見神楽の面白さを知ったからこその石見神楽づくしです。お酒もお茶もお菓子もおつまみもどれも美味しく、石見神楽のパンフレットはこの旅行記を書く資料にもなりました。
島根県の良いところは人より知っている自信がありますが、今回初めて見た石見神楽は、個人的には気軽に楽しめる伝統芸能として、島根県でも非常におすすめのコンテンツになりました。出雲大社、松江城、石見神楽くらいの勢いでもいいです。隣の鳥取県と併せても、名探偵コナン、ゲゲゲの鬼太郎、石見神楽で肩を並べるかもしれません。(実際コナン列車・鬼太郎列車・石見神楽列車が山陰両県で走っていた時もあります。)





それぐらい島根県の人にとって『石見神楽』が身近な存在だということを身に染みて実感しました。毎週末に近所の神社で飛び降り駆け回り演出もド派手なヒーローショーが行われていて、子供たちだけでなく大人でも楽しめる伝統芸能でした。島根県の魅力をまた一つ知れて、とても楽しかったです。
以上、知らない人に知ってもらい、来たことのない人に来てもらうための石見神楽PJで
『知っていて行ったことがあるのに見たことがない』人が
『やっぱり行って見るしかない!』になって
『やっぱり行ってよかった!また見に行きたい!』
になるまでの旅行記でした。
投稿者プロフィール
