Vアーティスト特集♯7 クリエイトが連鎖する、VRで繋がる令和のクリエイターの形『VisitoR』

誰もが参加でき、誰もが主人公になれる。

創作の連鎖が作品を生み出すクリエイト活動は、VR技術の進歩により今や国境を越えてつながるものへと進化しています。

先月新曲『Hello! Metaverse.』をリリースした、VRChat発のクリエイター集団『VisitoR』は、メンバーそれぞれ年齢や育ち、住んでいる国もバラバラ。
ですが、それぞれが体験してきた経験やアイデア、クリエイトが連鎖となって次々と作品を創り上げているそうです。

今回は楽曲を中心としたクリエイト集団『VisitoR』に令和のクリエイトスタイルについてお話しを伺いました。

■公式Twitter https://twitter.com/VisitoR_VR
■YouTube https://www.youtube.com/channel/UCZhQVHQJaId7YW3TyRSXktQ/featured

創設・作曲・演出・動画:tai_tai(@tai_tai000)
作詞ラップ:minigun(@m134_minigun)
作詞・マネージメント:suibow(@suibow_vrc)
カメラ・演出:koENDro(@pepperkenshi)
マネージメント・マーケティング:POKO(@POKO903)
ワールド制作・その他技術担当:bukkie(@bukki_e)

楽曲を中心としたクリエイター集団『VisitoR』

昨年10月から本格的に活動をスタートさせた『VisitoR』ですが、現在メンバーはどれくらいいらっしゃるのですか?

suibow VisitoRは今集まっている6名の他、ディスコードサーバーには50人くらいメンバーがいます。VisitoRの創設者であるtaitaiさん曰く『みんなが出入り自由な団体を作りたいね』ってことで人数が多いんです。

1曲だけの参加の人もいるし、続けて活動している人もいるし。
今いる6名は固定メンバーですけど、そのほかにもたくさんメンバーがいます。

taitai グループの誕生のきっかけとしては、もともと自分が韓国ドラマにはまっていて、語学交流のためにキッカケにVRChatに来たんです。
それでメンバーのminigunにVRChatで韓国語を教えてもらっていたんですが、話をしている中でミニガンがラップを歌えるって事が分かって。

そこから『歌を作ろうよ』って話になったんです。

taitai ここに集まっている6人のメンバーは何故かずっといますけど(笑)
VRChatって趣味の世界だから、モチベーションの熱量が上がったり下がったりでその頻度活動状況が変わるんですよね。

なのでその都度『こういう事やるんだったらこういう人がいるよ』とか『これやるならこの人呼んだ方がいいよ』って感じで人が集まっていて。

だからVisitoRは『みんな手伝って~!』って感じで動いてる団体なんです。

新曲拝見させて頂きましたが、VRChatで活躍しているムーブ集団『Sexy force』のメンバーの皆さんもPVに出演されていましたね。

POKO はい、僕らが誘ってエキストラとして来ていただいたって感じです。 
我々の概念的には1回手伝ってくれたらもうVisitoRの仲間だぜって感じだよね(笑)

メンバー内での『いいじゃん!』が創作の糧に

taitai VisitoRは楽曲の生まれ方もまた面白くて。誰かが『こんな曲できたよ~』っていうのをVRChat内で流すんですね。そうすると誰かがラップで歌詞を乗せてくるとか、そうしたらまた『その歌詞いいじゃん!』って誰かが書き起こしたり…。

だから誰が何を担当しているっていうのは結構バラバラで。

最終的にまとめるのは俺なんですけど、キッカケやメンバーの役割もその都度変わります。

グループ内で誰かが創作したら誰かがまた創作して、みたいな感じなんですね。
ある種ひと昔前のニコニコ動画のカルチャーが再現されているというか。
誰かが作品を投稿したら別の誰かがアレンジしたり、動画のMADを作ったりとか…。
そういう感覚で創作が行われているんですね。


suibow そうですね。2曲目の『フクロウ』とかがまさにその流れを汲んでますね。

VisitoRの活動関係なく私が勝手に歌ったものが、taitaiさんが『映像つけようよ!』って言いだして、そしたら映像を派手にしたいから曲も派手にしよう!って編曲してオーケストラ風になりました。

1曲目2曲目、3曲目とそれぞれ特色が違うのはみなさんが持ち込みで創作をしているからなんですね。

taitai そうなんです。それも結構意図的に狙ってて。
例えば1曲目、2曲目と同じことやっていくと『VisitoRってこうなんだよね』ってイメージが付いちゃって。
やることが狭まっちゃうじゃないですか。

だから『VisitoRはこんな事もやりますよ』って感じで色々なジャンルのものを作っていました。

それぞれ違うけど、全部まとめて聴いたら『これはこれでVisitoRなんだ』って思ってもらえると嬉しいです。

クリエイター同士の距離が近いVRChatだからこそ生まれる作品

VisitoRは楽曲制作だけでなく、3Dモデル制作やワールド制作、動画編集もしていたり、マルチに活動されていますよね。

taitai VRChatって色々なクリエイターがいるじゃないですか。曲を作る人もそうだし、動画を作る人、演劇する人、ダンスする人。みんなが繋がれば面白いものが出来るでしょう。

だから音楽だけの集団って訳でもないんですよね。

音楽をベースとして色々な創作に枝分かれしているんですね。

taitai VRChatって国が違ったり、年齢が違ったり、いろんな人と繋がれるんですが、そうなるとこれまで見てきた物も違うし、聴いてきた物も違うし。
でもそのなかでもどこか繋がる部分があるんです。

それがどんどん組み合わさっていくことで新しいものが生まれるんです。

3曲目の『Deviate』は特に映像にこだわりを感じられて、ストーリー性のあるPVに仕上がっていましたね。

POKO はい、僕はPVのストーリーの主役をやらせてもらいました。

suibow それで私がPOKOのイメージを拾い上げながらストーリーを作ったっていう感じですね。

こうした取り組みのもVRChatならではの創作の形ですよね。
現実だとクリエイトの距離が離れているというか。
昔は音楽を作る人は音楽を作る専門で、そのほかのクリエイトと島が離れていた感じがありましたが、VRChatはそこの距離がかなり近いなぁと見ていて思います。


そういう意味で、ある種インターネットカルチャーの究極系を体現しているのがVisitoRなのかなと。

koENDro そうなんですよ。そう言っていただけるとありがたいです。
自分もよくDJイベントとか弾き語りのイベントとか、撮影の集いとかにも参加させてもらっていて。

VRChat内にも様々なカルチャーがありますが、そこがもっと交わっていけばいいなって考えているので。

だから自分では出来ない『これやってみたいな』って要望を出したら『それならやってみよう』って動いてくれるVisitoRのメンバーには感謝してます。

suibow それぞれの得意分野で、みんなで一緒に1つのものを作っていこうというのは面白いですね。

一発撮りの360度MV!『Hello! Metaverse』

5月6日に公開された『Hello! Metaverse. 360°ver』はどういったキッカケで誕生したのでしょうか。

taitai 楽曲そのものは『Hello! Metaverse』の名の通り、メタバースの中心で活動しているクリエイターやダンサーを集めた作品になっています。
前から曲をバンドサウンド+ダンスを組み合わせた曲を作りたいなとは思っていて。

特に現実では出来ない表現。パーティクル表現とか、照明を音楽に併せて動かすとか。
それにダンスを混ぜたら何か面白いのが出来るんじゃないかなって。

360度映像のMV撮影はそういう所がキッケケで始まっています。

suibow 現在のVRではどうしても曲とダンスにラグが発生してしまうのですが、その中でもどうしたら綺麗にダンスを見せることが出来るか、プロのダンサーさんを呼んで一緒に振付を考えました。

taitai 360度映像だとカメラが一発撮りしか出来ないんですよ。
だから誰かミスったら終わりっていう緊張感の中撮影しました。この動画は編集無しなんです。

編集無しの一発撮り!それはすごい

suibow VR持ってる人はVR HMDを被って見ていただければより現場の雰囲気を楽しめるんじゃないかなと思います。

taitai 360度映像だから自分の好きな人をずっと見ることも出来るしね(笑)
好きなダンサーさんが目の前で踊ってくれてる訳だから。

suibow それから今回の楽曲の推しポイントは実際にPVを撮影したロケ地に行ける事なんです。

taitai ワールドは撮影で使った時そのままのギミックを残していて。
パーティクルを出すボタンとか音楽を鳴らすスイッチがあるんです。
撮影当日はここにスイッチャー係がいたんですよ。

suibow 曲が流れるとギターやDJブースが光ったり。ここに来た人はPVの通りスイッチを動かせばVisitoRごっこが出来ます(笑)

撮影に使われた場所を巡る“聖地巡り”みたいなものは現実でもありますけど、撮影に使われたギミックまでそのまま残っているのは面白いですね。ロケ地というよりも撮影スタジオがそのまま残ってるみたいな。

taitai ね、みんな押したいよね!このスイッチ。

個人的にはギターはすごくこだわってて。
パーティクルで出来た光るギターなんて現実には無いでしょ。

せっかくVRChatだったらこれぐらいしようよって。

POKO そこもVisitoRのメッセージ性の1つですよね。
“現実より勝る体験”というか。

taitai そうね。それPOKOとずっと最初から言ってたよね。

suibow 『見れないものが見たい、見たこと無いものが見たい』って。

POKO そうなんですよね。やっぱりどうしても現実のライブ会場で聴く時の音圧とかはVRではまだ感じられないじゃないですか。
だけどこういうパーティクルとかライティングだったり、オーディオリンクにあわせて柱を光らせたり。

そういう演出は現実よりVRの方が確実に勝っているので。それが少人数でも出来ちゃうっていう。

taitai どうせだったら現実よりも面白いことしたいよね。
それで技術担当のbukkieさんに制作をお願いしたんです。

bukkie そうですね。今いるワールドの制作者はまた別の人なんですけど、私はVisitoRの中で技術顧問のような役割をしていて。メンバーの中から出てきたアイデアをどのようにして実現していくかというのを考えています。

taitai suibowさんとか俺とかが無茶ぶりするもんね(笑)
この後ろの背景もそうですよ。この照明も『バスドラ踏んだら音にあわせて照明がバーンって光やつできないの?』って言ったら『出来ますよ』って(笑)

それが面白いよね。今だからかな?
まだまだ発展途上のVRChatだからみんな『やろう!』ってなってくれるのかな。

suibow まだ発達の余地がたくさんあるというか。みんな手探りで『これ出来るかも』『あれ出来るかも』って楽しんでくれているというか。

しかしメンバーも多い中、みなさんの意見をまとめるのって大変じゃないですか。

taitai めっちゃ大変!

めっちゃ大変だけど面白いよね。
みんなやっぱり、どこかで『出来るかどうか分からないし、別にいいよ』って言ってる人も、どっかのタイミングで熱量がカッって上がる瞬間があるのよ。

その時ってすげー気持ちいのよ!

『これ出来た!!』っていう。

POKO 現実の真似事じゃいかねーぞ!っていうのが面白いですよね。

人が交わるからこそ開花するクリエイト

VisitoRで今後やっていきたい事ありますか?

minigun 今もそうだし、これからの目的もそうなんですけど、クリエイティブグループとして大人数でいろんな企画を現実化させていきたいですね。
例えばミュージカルとか、舞台の演出とか。

やりたいことをメンバー同士でいっぱい出し合って、そこからまた繋がったらいいですよね。
VisitoRはやりたい物を現実化させるグループなので。

メンバーさんそれぞれでやりたい事って違うと思うんですけど、そこからまた新たなクリエイトが生まれたり、予想もつかなかったことが起こったり、見ている側もそういった面白さがあってとてもワクワクします。

suibow ふふ、次に何が出るか楽しみにしててください!

taitai 『自分は出来ない』『俺なんて』って自分のクリエイトに自信がない人って結構いるじゃない。
でもそういう人たちってすごく魅力的なのよ。

その人たちが開花するところをこれから見せていきたいですよね。

素晴らしいですね!
今VRChatで活動している人たちって個人個人でそれぞれ力を持っている方だと思うんですよ。
クリエイトに優れている人だったり、奇抜なアイデアを考えるのが得意な人だったり。
でもそれらを1人だけで全部出来るって人はいなくて。
皆が集まることによってはじめて出来ることってありますよね。

それは物量という意味だけでなくて、やる気のモチベーションであったり。
自分1人で抱え込むのは大変だけど、仲間がいるから頑張れるみたいな。

『この人が協力してくれるなら私もこれが出来る』みたいな。
そういうのがクリエイトの連鎖反応なのかなって思いました。

suibow ありがとうございます。

taitai だからたくさんいろんな人が来てくれると嬉しいよね。

suibow そうそう。VisitoRは出入り自由なので。アイデアだけ出して帰る人とかもいるので(笑)

taitai ずっと活動するってみんなもしんどいだろうし。
だから『やりたい!』って思った時に『バンッ!』って集まれるのがね、一番楽しいところだよね。

suibow VisitoRのこれまでの活動はミュージアムで誰でも見れるようになっているので、VisitoRのことが気になった人はぜひ来てくださいね!

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