VRにおける無声演劇『アバター劇場 テアトロ・ガットネーロ-The Auction-』が
2022年1月と2月にかけて連続で合計10公演を終えました。
2ヶ月にかけて10回の公演、全て満員満席にて累計約500名以上の来場を記録したテアトロ・ガットネーロ-The Auction-を終えたBREATH ACTORS『カソウ』舞踏団 団長から見た舞台が「できるまで」と「終わってみて」のお話、させてください。
※記事内の写真はパンフレットなどより引用させていただいております。
目次
テアトロ・ガットネーロとは
アバター劇場「テアトロ・ガットネーロ」は、黒猫洋品店が主催する「アバターの魅力を引き出す」ことを主眼においた、VRChat上で行われる劇場型アバター宣伝イベントです。
美麗なワールドと専門のアクター「カソウ舞踏団」による、「アバターそのものがそこにいる」かのような舞台は、たくさんの方のご支持をいただいております。ご興味のある方は、ぜひご来場ください。
なお「The Auction」は動画版が公開されております。
今回の「The Auction」ができるまで
今回、テアトロ・ガットネーロ「The Auction」では皆様から大いに寄せられるご意見がございます。そう「どうしてこんな台本になったのですか?」という質問です。
順を追って書いていきますと「アバター宣伝」であるテアトロ・ガットネーロの特性上、まず最初に出演アバターが決まります。
シルヴィア、リリエ、マオトゥの三人から、どんな台本を書くか…「登場人物が決まってから、脚本に手を付ける」という、なんとも不思議な作りをしています。
ただでさえ全然タッチの違う三人のアバターですが、それぞれにテーマがございました。作者様から頂いた要望だったり、アバターの設定だったり様々ですが…
マオトゥでは「衣服のバリエーションと剣を映えさせるアクション」
やはり動きやすいことと、モデラー様より「がんがん動いて欲しい、武術とかも好き」ということで
形意拳の演舞と、大太刀の剣舞を用意させていただきました。Auctionの見世物というテーマではありますが、役者達の練習時間は実を言うとこちらが一番かかりました。
兎らしさと、力強くも可愛いこと、そしてなにより「動きが映える」アバターであることを表現させていただきました。
シルヴィアは「強いのだけど、前線で泥を啜って戦ったことがないという意味での『お嬢様』感」
一見すると「誇り高さと強さを併せ持つ、格好いい騎士」という印象だと思われるシルヴィアにおいては、もちろんそういった部分を劇中に入れつつも、Boothページに明記されている設定などでは
「帝国の党親衛隊に所属しているお嬢様」
「前線で泥をすするようなことはない」
「甘味巡りに繰り出すこともあるとかないとか」
などなど、ただ単に「強い」存在ではない世界観があるとわかります。
そういった部分を表現するためにリリエに怖がられて困ってしまったり、外出時に剣を忘れたり、焦ってしまうと感情的になって少し荒っぽくなってしまったり。
「強い」のですが「お嬢様」として「強すぎない」という演出を徹底して盛り込みました。
格好良さと、慣れないことに懸命である可愛さのような…そんな、少しギャップのある役作りを致しました。
リリエは「かわいいのだけどしっかりとセクシーに」
これは大変悩みに悩んだものでした。テアトロ・ガットネーロで「セクシーに」というのが難しく…
あの荘厳な雰囲気で、少女のセクシーさをどう「演出」するのか。
更には豊富なシェイプキーで髪型が変えられること、公式より衣装が出ていることなどもいかに「演出として盛り込む」のか。
少女とセクシーという、ある意味では相反するようなことの両立を必死に考えていると「オークション」が見えてきました。次にぶつかったのは「リリエがどんな役をやるのか」です。
リリエだけが実はさらに一つ役を演じています。リリエが演じる「商会の一員」が演じる「少女の奴隷」なのです。演技をしながらも、どこか違和感程度の「演技臭さの残り香」と言えるようなものを表現することに力を入れました。劇中劇が一番しっくりハマっているのがある意味リリエではないかな、と思います。
正直脚本を担当する時、私よいかみはしばらく頭を抱えました(笑)
アバター同士が喧嘩しかねない、でもアバターを生き生きと捉えたい。かといってアバターをただ歩かせてポージングで終わり、というのも。
そこで「劇中劇」の手法で考えることになりました。
『劇中劇』とは 劇の中にさらに劇があること、劇の中に挿入された劇のこと。 有名な劇中劇といえばウィリアム・シェイクスピア作品の『ハムレット』『真夏の夜の夢』『恋の骨折り損』 いわゆる「入れ子構造」によって独特な演出効果を生むために使われることが多いものです。 オペラ、ミュージカル、映画はもちろん、現代ではゲーム、ドラマ、漫画、アニメにも使われています。
アバター作者様やいろんな方々の要望に応えるため、アバターに役を演じてもらう方法にしてみたのです。
そのためもちろん、出来上がった台本をアバター作者様に提出して「この台本で、アバターのイメージが壊れてしまうことがないだろうか」ということと「この解釈で間違っていないだろうか」などという確認をし、アバター作者様達にしっかりと許諾を得てからの公演になりました。
これらの台本が完成すれば、このアバター達が一緒に舞台に立つことができるのではないだろうか。
もしやすると劇中劇にせずとも同じ舞台で、完璧に輝かせることは可能だったのかもしれません。
ただ、スケジュールや使えるギミックなどを駆使してできることをできるだけやっていく、という舞台の上で、今回とても革命的な演出にできたとおもっております。
しかし、そうなると演劇の要求レベルが段違いに上がってきます。
喋るアバターは司会のメビウスのみ、鳴らす音楽は劇中曲一曲のみ。
それ以外は声も、効果音も使わずにどうやって「アバターが生きていると錯覚できるような、別世界たりうる舞台にするのか」が、今回の脚本/演出での課題と挑戦になりました。
どうせならもっと挑戦してやろう、とおもってカソウ舞踏団の演者達には「公演開始1分前になって初めて、その公演の配役を伝える」という無茶難題も投げつけてみました。
まだまだ黎明期のVRにおける舞台役者には「汎用性」と「特化性」のようなものがどちらも必要だと思い、カソウ舞踏団の方針にもなっているので団員はしっかりとこなしてくれました。
時には配役を告げた後に「今日はシーン〇〇とシーン〇〇を即興でやります」というような内容があったことも…。意地悪や遊び心というより「オーディエンスの反応によって変化していく脚本」でもあったので、大変やり甲斐と成長を感じる舞台になりました。
これからのVR演劇 「テアトロ・ガットネーロ」
今回2022年1月2月に開催されたものは「The Auction」というサブタイトルをつけさせていただきました。今回からナンバリングを廃しまして「サブタイトル」にて幕を表記させていただこうとおもっています。
そして、公演を2種類に分ける予定があります。
サブタイトルが「アバターショーケース」の場合は「演劇要素は薄く、オーディエンスとの交流とアバターを見せることに重視」した公演を。
そして、サブタイトルに「アバターショーケース」がついていない場合は「演劇要素が高く、劇中劇の手法を扱ってアバターを活かしながら劇をする」タイプの公演を。
まだまだわからないことだらけ、黎明期のこのメタバース、VRで作品を作るにあたって、暗中模索だろうとトライ&エラーしながら研鑽していこうとおもっています。
皆様の応援によって、御来場によって、感想によって我々は舞台に上がり続けられます。本当に、ありがとうございました。これからも、皆様に驚いてもらえて、感動してもらえて、面白いとおもってもらえるものを作り続けていきます。
「The Auction」を終えて『たくさんの感想』が
今回の「The Auction」を公演中、そしてネタバレ解禁からたくさんの記事を書いていただきました!最後にそれらを一部ですがいくつか、紹介させていただきます。
もちろん、こちらのバーチャルライフマガジン様にも。
MoguLive様
yahooニュースに三度も載せていただきました。大変モチベーションに繋げさせていただきました!
noteにもたくさん、全部ご紹介しきれませんこと誠に申し訳ないです…!一部ですがご紹介を。
テアトロガットネーロの感想/メタバースなにもしない人
短くしっかりとまとめて読める記事、私よいかみが大変喜んだ内容で、まさに演劇の感想と言うべき記事でした。